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エゴチスムな日々

イタリアの閑暇そしてその悦楽

接吻:フランチェスコ・アイエツ

イタリア絵画 ミラノ・ロンバルディア 新古典主義 ロマン主義

縦112cm、横88cmというそれほど大きくない画面なのに、

ひと目で忘れられなくなる絵画があります。

その絵の前に立つと、なんとも言えない切ない気持ちになり、

どことなく哀愁漂う物語をつい心の中で思い描いてしまうのです。

 

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これこそまさに19世紀の感受性豊かなロマン主義者たちを魅了した1枚、

フランチェスコ・アイエツの「il Bacio/接吻 1859年」です。

 

1859年といえば、イタリア統一運動リソルジメント真っ盛り。

1848年のミラノやヴェネトでの反乱、オーストリアに宣戦布告した

第一次イタリア独立戦争などでの敗北による失意、混乱・・・の後に

フランス皇帝ナポレオン3世のイタリア介入による第2次イタリア独立戦争。

マジェンタの戦い、ソルフェリーノの戦いによってフランス・サルデーニャ連合軍がオーストリア軍に勝利し、ヴィットリオ・エマヌエーレ2世とナポレオン3世は

1859年6月8日、ミラノ入城を華々しく果たします。

 

フランチェスコ・アイエツはこの時、ミラノ貴族アルフォンソ・ヴィスコンティ・ディ・サリチェート伯爵から依頼され、この「接吻」を急ぎ制作。

3ヶ月後にはブレラ美術アカデミーで発表され、当時のミラネーゼたちの

オーストリア追放による歓喜と共に、このロマンティックな絵を記憶に

焼き付けたのです。

 

これは当時リソルジメント期におけるロマン主義的「愛」のシンボルとしての役割も

大きいですが、恐らくアイエツはフランスとの同盟が結ばれたことをも

示唆しているかもしれません。

女性のドレスの青、レースの白、そして男性のタイツが赤・・・

つまりフランス国旗の配色ですね。


実はアイエツはイタリア統一後の1861年にも全く同じ構図で
同じタイトルの「il Bacio/ 接吻」を制作しているのです。

 

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この絵で、女性のドレスは青ではなく白に変わっています。
男性のマントの袖口や帽子の緑が濃くなって、イタリア国旗のみの
表現になっているようです。
何かの本に「この絵は祖国イタリアへのキス」と書いてあったような・・・

 

アイエツより20年ほど後に生まれたミラノの画家ジェローラモ・インドゥーノが

興味深い絵「悲しい予感」を1862年に描いています。

このインドゥーノはリソルジメント期の戦争絵画や兵士たちの絵を

たくさん残していて、現在でいうところの「報道記者」みたいな役割を

していた画家だと思います。

 

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まだあどけない少女が、何か思い詰めたような表情でベッドに腰掛けています。

家族か、もしくは恋人が、イタリア統一運動の兵士なのかもしれません。

手に何か持っているような感じなので、もしかしたら彼から手紙を受け取り、

イヤな胸騒ぎがしたのでしょうか・・・

彼女の後ろの壁にはイタリア統一の英雄ガリバルディの小さな胸像があって、

その横にかかっている絵が、なんとアイエツの「接吻」です。

 

アイエツが「接吻」を発表してから、ほぼ同時に、その絵が「イタリア統一」という

国民の悲願を表すシンボルになっていたのではないかなと思って,もう一度

「接吻」を見ると、甘く切ないだけではない、もっと違う感情が生まれるのです。

 


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