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エゴチスムな日々

イタリアの閑暇そしてその悦楽

中世都市ベルガモを歩く

スタンダール ミラノ・ロンバルディア ロマネスク 中世

フランスの文豪スタンダールは1801年、日記に「ミラノからベルガモへの街道は

素晴らしく、世界でもっとも美しい地方のなかを通っている」と書いています。

 

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ロンバルディア平原に広がる田園風景と、遠くに雪を抱いたアルプス山脈を車窓から

ぼんやり眺めながら19世紀の文豪に思いを馳せつつ、ミラノ中央駅から50分ほどで

ベルガモ駅に着きました。駅に降り立ち、北側を目指して歩いていくと

小高い丘の上にある、もう一つの町が浮かび上がるように視界に入ってきました。

まるでそこだけ時間が止まったかのような錯覚に陥る感動的な景色です。

 

駅から歩くこと約20分、ケーブルカー乗り場に到着。

1887年から運行しているこのケーブルカーで、浮かび上がるように見えた旧市街へ

一気に上って行きます。

今までの喧噪が嘘のように、いきなり中世の町に迷い込んだかのような景色が

目の前に広がり、自分がどこにいるのか一瞬分からなくなってしまうほど。

 

ベルガモは駅前に広がる新市街バッサと、丘の上の旧市街アルタという2つの地区に

分かれ、人口約12万人を擁するロンバルディア州の都市です。

その歴史は古く、古代ローマ時代から中世の初期頃まで人々が住み着いて町を

築き上げてきました。これが旧市街アルタです。

そして15世紀のルネサンス期になると人口増加のため、だんだんと居住区が丘の下の

平野部にも広がっていきます。この平野部の新市街がバッサと呼ばれています。

ベルガモの町の様々な発展・展開は、この新市街バッサがルネサンス以降は

担ってきたので、旧市街アルタは中世時代のまま時が止まり、歴史地区として

保存されることになった、大変希少な町のひとつです。

 

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イタリアの他の中世都市と同じく、旧市街アルタも古代ローマ時代からの城壁に

囲まれています。ベルガモは15世紀から1797年までの約350年間に渡り、

ヴェネツィア共和国の支配下に置かれていました。その時にローマ時代の城壁に加え、

さらに強固な要塞が4km以上に渡って造られ、現在も残っている城門の上部には、

ヴェネツィア共和国のシンボルである聖マルコの獅子の紋章が浮彫で表されていて、

かつての栄光を今にとどめています。

 

石畳の路地や石の壁に歴史を感じながら、町の中心ヴェッキア広場へ。

このヴェッキア広場に中世自治都市の市政の中心だったラジョーネ宮や、

現在は図書館になっているヌオーヴォ宮などがあります。

そのラジョーネ宮を前にして左側に位置する「Caffe del Tasso」はイタリアでも

最古のカフェとして有名で、なんと1476年から営業しているそうです

(室町時代からと考えるとその歴史の長さをさらに実感できる!?)

 

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ベルガモの重要な歴史的建造物に囲まれたヴェッキア広場の、

アーケードの向こう側へ行ってみると、今度はドゥオモ広場へと続きます。

このドゥオモ広場には美しいコッレオーニ礼拝堂と

サンタ・マリア・マッジョーレ教会のファザードが目に飛び込んできました。

ここには宗教的な建造物が並んでいます。

 

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夕方の陽が傾きかけた頃に行くと、神々しいまでの光と優雅に佇む礼拝堂の姿に

思わず立ちすくんでしまうほど。息をのむ美しさです。

 

このコッレオーニ礼拝堂はヴェネツィア共和国の傭兵隊長であり、

かつヴェネツィア軍総司令官、そしてベルガモ領主でもあった

バルトロメオ・コッレオーニが自身の霊廟とするために、当時最高の建築家である

ジョヴァンニ・アントニオ・アマデオに築かせました。

1470年頃から1476年にかけて建設され、聖バルトロマイ、聖マルコ、聖ヨハネに

捧げられた礼拝堂です。

 

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多色大理石をふんだんに使用し、それらを様々に組み合わせ、ルネサンス期の

優雅さと鮮やかさを最大限に引き出した素晴らしいファザード。

ゴシック様式のエレガンスを残しながらフィレンツェのルネサンス様式を

取り入れたような折衷様式になっており、ひと目でその華麗な装飾に目を奪われます。

これが建築家アマデオの独自の特徴であり、その折衷様式をしてロンバルディア・

ルネサンスの傑作のひとつと言わしめました。

 

残念ながら未完のまま残された礼拝堂内部ですが、

18世紀にバロックの装飾が施され、ファザードから受ける印象とは少し違う感じを

受けます。

1475年に死去したコッレオーニの墓碑が入り口の正面奥に置かれており、

傭兵隊長らしく騎馬像の彫刻で飾られています。

また入り口左側に横たわる少女の彫刻があるのは、コッレオーニの愛娘メデアの

墓碑です。

 

華麗なコッレオーニ礼拝堂の左側に軒を接してひっそりと繋がっているのは

サンタ・マリア・マッジョーレ教会です。その入り口は12世紀のロマネスク様式、

コッレオーニ礼拝堂と並ぶ姿はまさにイタリアならではのロマネスクとルネサンスの

融合といった感じがして、非常に美しい空間を作っています。

 

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サンタ・マリア・マッジョーレ教会の入り口に施された装飾はイタリアの北部の

ロマネスク建築に見られるもので、こうした柱廊式の玄関をイタリア語で

プローティロ(Protiro)と言います。

このプローティロの特徴はライオンなどの彫像があって、その上に円柱、そして

円柱にかかるアーチ型の屋根というパターンで構成されています。

この動物の彫像はだいたいライオンが主流みたいですが、他には像や雄牛などの

彫像もあるようです。

 

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この教会内部も17世紀に改装されたようで、思いっきりバロック様式に

なっていました。

ロマネスクの素朴な外観から、中へ一歩入ると目がくらむような感じがしますが、

これもまた旅の思い出には良いのかもしれません。

 

ほかにも色々な見どころがありますが、オススメはこの旧市街アルタから、

もう一度ケーブルカーに乗り、海抜500メートルの丘サン・ヴィジリオへ行き、

この地方の景色を上から眺めることです。

 

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冒頭でご紹介したスタンダールの日記の続きですが、彼はこうしたベルガモの

丘陵の尾根を馬で散歩した時の感想も書いています。

「この地方は素晴らしく、うっとりする眺めだ」と。

 

よく晴れた空気の澄んだ日にはアペニン山脈からピエモンテのアルプスまで

見渡せるようですが、こうして少し曇っていても、また霧があっても、

雪が降っていても、それはそれで幻想的な風景になり、スタンダールも感じたように

「うっとり」しながら眺めてしまいます。

 

もちろん目の保養をした後は、ベルガモ名物のラビオリ・カゾンチェッリと

特産ワインのヴァルカレピオを堪能することもお忘れなく・・・




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