読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

エゴチスムな日々

イタリアの閑暇そしてその悦楽

エレオノーラ・ダ・トレドのドレス

フィレンツェのウフィッツィ 美術館を初めて訪れた時、その人や表情などよりも

ドレスの模様の素晴らしさに目を奪われて忘れられなくなった絵があります。

ブロンズィーノの「エレオノーラ・ダ・トレドと子息ジョヴァンニ」です。

1545年に描かれました。

 

f:id:egotisme:20150416002403j:plain

 

メディチ家の宮廷画家として信任の厚かったブロンズィーノは何枚もの

肖像画を手がけていますが、このエレオノーラの肖像画は、彼女やその息子を

描くというよりも、メディチ家の権力を見せつけるかのような豪華絢爛なドレスを

描くことに全神経を集中させているようにも感じられます。

 

イタリアのルネサンス期(14〜15世紀)には、こうした衣装の文様を念入りに

描かれているのを目にします。例えば以前にもご紹介したクリヴェッリなどは

様式化されたザクロ文様を細密入念に描いていて、見るものを圧倒させます。

1488年頃の作品は、文様図鑑のごとくと言っても過言ではありません。

 

f:id:egotisme:20150416004229j:plain

 

またポッライウォーロの1470年頃の作品、若い女性の肖像画などもドレスの文様が

印象的。おそらくザクロの文様と袖には蓮の花が描かれているのでしょう。

ザクロは「不死と豊穣」を意味する、大変重要な文様であったことが分かります。

 

f:id:egotisme:20150416004701j:plain

 

ただそれ以降の時代はほとんど衣装の文様は描かれなくなります。

レオナルドやミケランジェロ、ラファエロなどは全く無視しているし、

マニエリスムの画家たちも衣装の文様には注目していません。

それよりも明暗やボリューム感・立体感を表現するために技術を磨いています。

 

そんな中で例外が、このブロンズィーノの「エレオノーラ」のドレスなのです。

 

f:id:egotisme:20150416005229j:plain

 

黒と金銀の色彩とふんだんに使われた装飾品が見事に表現されています。

この柄はルネサンスを代表する模様で、豪華なビロードの質感までが

伝わってくるようです。当時のフィレンツェはヨーロッパの中心的な絹織物の

産地。ここで高度な技術で染色されたり、織られたものは当時の最高級品でした。

熟練の職人たちには高い報酬が約束されていましたが、その代わりに

フィレンツェを離れることは禁止されていました。

 

こうした最高級の生地を使ったドレスを描くのには、相当の技術を要したはず。

ブロンズィーノには、このドレスと同じ生地見本が与えられていたそうで、

それを見ながら、触りながら、画家は絵筆を動かし切磋琢磨していたのでしょう。

そして仕上がったエレオノーラの肖像画は、どこよりも優れた繊維産業が

発達したフィレンツェの富を見せつけ、それを擁護しているメディチ家の

権力を誇示し、このフィレンツェにこそ素晴らしい芸術が花ひらいたということを

ヨーロッパ中に伝える役割を持っていたのです。

 


人気ブログランキングへ