エゴチスムな日々

イタリアの閑暇そしてその悦楽

絵画の中のファッション

以前ブログでご紹介したブロンズィーノ描くエレオノーラ・ダ・トレドの

肖像画。その時にドレスに使われている美しい布地について少し触れましたが、

今回はその袖からポコポコとはみ出ている、白い布について書きたいと思います。

 

egotisme.hatenablog.com

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美しい袖の布地の切れ目からはみ出ている白い布地・・・

ルネサンス時代のドレスの袖は常に取り外しができるようになっていて

そこだけ取り替えたりしていたようですね。その縫い合わされていない

布と布の間から下に着ている白い服がはみ出しているのです。

 

この白い服はずばり「下着」です!

当時はリネン製の白い下着を着ていたようで、色々な肖像画を見れば、この

白い下着がいかに大切だったかが分かります。

 

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ティツィアーノ描く1514年頃の肖像画にもポコポコと袖から白い布が

はみ出していますね。まるでそれがアクセントになっているかのようです。

 

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もちろん女性だけでなく、男性の衣装にも同じように下着がはみ出るような

袖の仕組みになっています。これはフランソワ1世の肖像画です。

よく見れば袖だけでなく、前身ごろからも白い布がはみ出ていますね。

フランソワ1世のオシャレ心だったのでしょうか。

 

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こちらは1530年頃のバルトロメオ・ヴェネトが描いた肖像画。

光沢のある美しい表着が故意に切られ、その隙間から白い下着がのぞくような

形になっています。

 

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これはラファエロが描いた1516年頃の肖像画。こちらはポコポコと、というよりも

大きく切れた布地からチラリと見える感じの袖になっています。

豪華な衣装の隙間からこうして白い下着をのぞかせる流行がルネサンス期に

あったということが分かります。現在もジーンズなどを切り裂くような

流行がありますが、ルネサンス期にも上の絵にあるように「切り裂いた袖」が

大流行したのだそうです。意外な所で現代との共通点が見えて面白いですね。

 

こうしたリネンの下着は、中世頃からなんと19世紀の末まで、ほとんど形の変化なく

男女ともほぼ同型で使用されていたのだとか。ヨーロッパで木綿が一般的になるのは

19世紀はじめ頃。それまではリネンだけだったのですね。

 

リネンは下着だけでなく、ファッションにとって不可欠だったレースの材料でも

ありました。このルネサンス時代に流行ったドーナツ状の襞襟もリネン製です。

 

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言わずと知れたエリザベス女王1世の肖像画。この襟を「ラフ」と呼びます。

主に16世紀から17世紀頃にヨーロッパ中で流行したようですが、

特にスペインやオランダで大流行しました。

エリザベス女王のラフも美しいですけど、袖や前身ごろから

白い下着が出ていますね。この肖像画が1575年頃に描かれているのを考えれば

これがかなり長い間ヨーロッパ中で大流行していたということが分かります。

 

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1606年頃のルーベンス描く肖像画です。17世紀になると袖からポコポコと

白い下着が見えるのがなくなって、襞襟だけがやたらと強調されています。

 

このラフは(また下着も)白色だから汚れやすく、それを常に真っ白に

保っておくのは手間暇のかかることだったでしょう。もちろん庶民や農民には

そんな白い下着をつけるような贅沢は出来なかったと思います。

だからこそ、こうした肖像画でもより強調して描かれているのではないでしょうか。

当時はラフの形を保ち常に白い状態を維持するため専用の召使まで存在したとか!

つまり白い下着をはみ出させ、ラフの美しい形を保った姿を肖像画に残すのは

それだけ「服それ自体の価値」を誇示し、贅沢な行為であることを知らせるという

役割もあったのでしょうね。

 


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