エゴチスムな日々

イタリアの閑暇そしてその悦楽

カラヴァッジョに影響を与えた画家

----- カラヴァッジョは一群の地方画家(ロンバルディア派)の試みを

様式的価値にまで高めた画家だった -----と言った美術史家ロベルト・ロンギ。

 

カラヴァッジョはミラノで生まれ、そして13歳頃にシモーネ・ペテルツァーノの

工房へ弟子入りしていますが、どのような絵を見て影響を受けたのでしょうか。

孤独感が漂う画家カラヴァッジョですが、ロンバルディア派が与えた

彼への影響を調べてみました。

 

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有名な「トカゲにかまれた少年」の絵です。トカゲにかまれるという、

絵の題材としては少し変な感じがしますが、こうした小さな動物と遊ぶ風景や

動物にかまれた瞬間など、その一瞬の表情や驚きの様子をテーマとしたのは

ロンバルディア派の特徴でもあったようです。

 

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前回ご紹介したカラヴァッジョと交流のあったアンニバーレ・カラッチの

「猫にいたずらをする子供たち」という絵。さそりを猫の耳にあてて

無邪気に遊ぶ姿が描かれています。宗教的な意味もなく、普通の日常を

切り取ったかのような絵です。

 

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これはクレモナの女性画家ソフォニスバ・アングイッソーラのスケッチで

「カニに手を挟まれて泣くこども」というタイトルがついています。

なんと彼女の父親は巨匠ミケランジェロにこのスケッチを送り、巨匠が

ソフォニスバの才能を理解したとも言われているものです。

指を挟まれて痛くてビックリして泣いている様子が伝わってきます。

 

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ソフォニスバはこうした子供たちの日常や遊びを描いていて、こうした

象徴性の希薄な、通常の風俗画がロンバルディア地方ではすでに確立されて

いたということが分かります。カラヴァッジョもこうした先輩たちの

絵を日常的に見て研究していたのでしょう。

 

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余談ですが、カラヴァッジョの先ほど挙げた絵の、

花瓶の光の屈折まで描き、写実的に描写されているなど、やはり

カラヴァッジョの才能を表しているような感じがします。

 

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上の絵は16世紀初めから中頃にかけてミラノやブレーシャなどで

活躍していた画家カッリスト・ピアッツァ・ダ・ローディの

「コンサート」という絵。1528年頃の作品です。

これとよく似ているのが ↓

 

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カラヴァッジョの「合奏」1597年頃。白い衣装と手前に見える少年の

肩が非常に印象的です。右から2番目の少年はカラヴァッジョの

自画像ではないかと言われています。

 

上記に挙げたそれぞれの絵を見て気づくのは、ロンバルディア派の

絵というのは上半身だけを描いたもの、そして人物の身体の一部が

トリミングされているものが多々あるということです。

こうしたトリミングはロンバルディアの画家たちには定着した

方法で、当時のローマなどでは見られない方法だったそうです。

カラヴァッジョがローマで制作したトリミングされた作品

(例えばこの『合奏』など)を見たローマの画家たちは

さぞ驚いたことでしょうね。

 

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もう1枚カッリスト・ピアッツァ・ダ・ローディの1534年頃の

「キリストの磔」の絵。まさに今、磔にされている様子が

リアルに描かれています。足の裏まで描いているのも印象的。

 

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カラヴァッジョの「聖ペテロの逆さ磔」です。

光と影がもっと劇的になり、逆さ十字を持ち上げようとする

様子などがもっとリアルになっているような気がします。

足の裏が汚れているのも注目です。

 

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アンブロージョ・フィジーノの「聖マタイと天使」は

1585年頃の作品。フィジーノはシモーネ・ペテルツァーノの工房に

いたので、おそらく同工房に弟子入りしたカラヴァッジョは

彼の影響を強く受けているのではないかと思います。↓

 

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カラヴァッジョの「聖マタイと天使」は残念ながら第二次大戦で

焼失してしまい、白黒の写真が残っているのみですが・・・

フィジーノの天使に比べ、カラヴァッジョの天使は妖艶さ?を

増し、そして聖マタイが市井の人のようです(そして文盲?)

 

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こちらもアンブロージョ・フィジーノの「蛇の聖母」で

1583年頃の作品です。ミラノのサン・フェデーレ教会に

ありますが、この教会はカラヴァッジョが足しげく通って

いたと言われていて、この絵を何度も見ていることは確かだと

思います。

 

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こちらはカラヴァッジョの「聖アンナと聖母子」1605年。

マリアがキリストを支える姿など構図が似ていますね。

 

聖母が蛇をこうして踏みつけるという図像は「罪に対する

勝利」という意味がありますが、バロック時期(宗教改革時期

とも重なりますが)には、もともとあった蛇の意味「原罪」と

合わせて「異端 = プロテスタント」という意味も加わっているのだとか。

 

カラヴァッジョはロンバルディア派の風俗画に見られるような

自然主義や光と影の効果などを身につけてローマへ行き、

そしてそこで自らの表現をさらに高めていったような気がします。

 


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