エゴチスムな日々

イタリアの閑暇そしてその悦楽

絵画の中の受胎告知 2

前回「絵画の中の受胎告知 1 」で13世紀の作品まで飛んでしまいましたが、

その少し前、12世紀の受胎告知も珍しいので少しご紹介しておきます。

ヴェネツィアのサンマルコ教会にある受胎告知(モザイク画)です。

 

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泉で水を汲むマリアに、大天使がお告げに現れる場面です。

これは『ヤコブ原福音書』の「マリアは水瓶を持って泉へ行った。その時

声が聞こえた。『汝、祝福されし者よ。神は汝と共にあり。女の中で汝を

祝福したまえり』どこから声がするのかとマリアはあたりを見廻した」の

部分を描いていると思われます。声がして思わず振り向いたマリアの

少し驚いたような顔が印象的です。

ここでは鳩が描かれていないですね。また MP ΘYの文字が見えますが、

これはギリシャ語で「神の母」を表す頭文字をとったものだそうです。

 

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これはシチリアのモンレアーレ大聖堂にあるモザイク画で同じく12世紀のもの。

ここには鳩が描かれています。またマリアが糸紡ぎをしている様子。

糸を紡ぐマリアの描写は、2世紀に記された新約外典『原ヤコブ福音書』に

由来するものらしく、その中で天使は2度、マリアのもとを訪れるのだとか。

最初はマリアが泉で水汲みをしている時。

これがヴェネツィアのサンマルコ教会に描かれているのですね。

そして背後から突然呼びかけられたので

マリアは怖くなって家に急ぎ帰り、糸を紡いでいると、また天使のお告げが。

その時の様子がこのシチリアのモンレアーレ大聖堂に描かれています。

この糸を紡ぐという描写は特に東方のビザンティン芸術の特徴です。

 

そして、13世紀になると前回ご紹介したように「聖書」を手にしたマリアが

描かれるようになります。これはマリアの敬虔さを印象づける意図が

あったということでしょうか。

 

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ジョットの登場です。パドヴァにあるスクロヴェーニ礼拝堂のフレスコ画。

14世紀初め(1305年)に完成したと言われています。

ジョットが描く受胎告知はそれまでのビザンチン美術から大きく発展して

マリアも天使も「人間」に近くなっているのが特徴です。

 

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もうマリアはヴェールを被っていません。手には小さな祈祷書。

表情も真剣に天使の言葉を聞いているかのようです。

そして天使もマリアも室内の実際の「建築空間」に置かれ、

床にキチンと膝をついて、そこにちゃんと存在しているかのように

描かれています。

流れるような服の襞が、それまでの平面的な絵に比べて

人間の身体の厚みを表現しています。

 

こうした読書をしているマリアに天使が現れる場面は、

13~14世紀以降に西欧に登場した、最も代表的な構図です。

 

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シエナ派のシモーネ・マルティーニの受胎告知です。1333年頃。

ジョットがビザンチン様式を払拭したからといって、他の画家たちは

まだまだビザンチンの影響を脱していない様子が伝わります。

リアルさを追求するフィレンツェ派を横目に、シエナ派は優美さを

追求しました。

天国のシンボルとされた金を背景に、目もあやな天使と、読書中だった

マリアが驚いて少し怪訝な顔(?)をしている様子が描かれています。

マリアの衣装も素晴らしく、胴着の赤は

キリストの時代に未婚の女性に用いられた色で、マントの紺は

パレスチナの母たちが着用した色、つまり、マリアは処女で

ありながら母であることを示す色だそうです。

 

そして面白いことに、天使はオリーブの枝を持っています。

この時期のシエナ派の絵画にはオリーブがしばしば出てきますが、

これはシエナとフィレンツェの対立を反映していて、百合は

フィレンツェ市の紋章なんですね。だから画家(というか依頼主)は

描きたくなかったのかもしれません。

 

次はルネサンス時代の受胎告知を調べてみたいと思います。

 


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