エゴチスムな日々

イタリアの閑暇そしてその悦楽

絵画の中の受胎告知 3

15世紀のルネサンス期になると色んな要素を盛り込み、

非常に調和の取れた優美な構図の「受胎告知」になってきます。

 

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『ルカ福音書』には「天使が聖母マリアに会うためにやって来た」と

記述されているだけなのに、屋外の回廊や柱廊などが描かれて

室外で受胎告知が行われたように表現される傾向があったようです。

(イタリア絵画の場合、告知が花園で行われたように描いている

ものが多いのが特徴です)

 

上の絵はフラ・アンジェリコの受胎告知で1430年頃。

小花が咲き乱れる庭と美しい柱廊、そしてその庭はそのまま

アダムとエヴァがいた楽園へとつながっているようです。

そして罪を犯した2人は追われて楽園を出て行くシーンが

描かれています。

 

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足元には鮮やかに咲くバラの花が描かれています。

西欧においてバラには愛欲と純潔という正負両面の

意味があります(この辺りの詳しい説が、若桑みどり著の

『薔薇のイコノロジー』に書かれてありますので、

ご興味ある方は是非読んでみてください)

 

若桑先生の本によると「キリスト教の教義によれば、

フラ・アンジェリコが失われた楽園を受胎告知と

同画面に描いたのは、マリアが原罪をまぬかれた

『新しきエヴァ』であり、身籠るイエスがアダムの罪を償う

『新しきアダム』であることを示すため」と。

 

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またフラ・アンジェリコが描く天使の姿がすごく女性っぽい

と思いませんか。天使の性が男なのか、女なのかは

よく分かりませんが、中世の頃までは天使はどことなく

男性っぽい感じで描かれていると思うのですが、15世紀に

なると非常に女性っぽい天使として描かれています。

特にフラ・アンジェリコ描く天使は女性らしいですよね。

 

 その他アレッソ・バルドヴィネッティ描く天使も女性っぽいような・・・

 

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15世紀の後半になると受胎告知の場面はますます立派な建物内で、

当時最新の絵画理論であった遠近法を駆使した空間に描かれています。

 

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ピエロ・デッラ・フランチェスカの受胎告知。1460~70年頃。

どこまでも真っ直ぐ続く柱廊と美しいアーチが目を惹きます。
硬質な感じの建築物にひっそりとマリアと天使がいることによって
厳かな感じが漂う受胎告知です。

 

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カルロ・クリヴェッリの受胎告知。1486年頃。

これは、もう、なんというか、色んなシンボルを一気に

詰め込みました!という感じですね。

いつもの天使の横にはアスコリ・プチェーノ市の模型を持つ

守護聖人聖エミーディオが描かれているそうです。

(アスコリの自治を記念して描かれたため)

こうしてマリアと天使以外に色々な人が描かれているのも、

また珍しくマリアの部屋の中、しかも細部まで描かれているのも

この画家の特徴だと思われます。

そして目をひく美しいクジャク・・・

クジャクの肉は腐らないと古代には思われていたようで、

その考えから「不死」のイメージ、強いては

「キリストの復活」の象徴と見なされていました。

 

カルロ・クリヴェッリについては前にブログに書きましたので

そちらもよろしかったらご覧ください。

 

egotisme.hatenablog.com

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ボッティチェッリの受胎告知。これは1489年頃のもの。

ここでは何が印象的かと言えば、大きな窓から見える風景と

それまでにはなかったマリアの大きな動揺のしぐさ。

まるで舞台を見ているかのように錯覚してしまいます。

この窓から見える風景は人間のいる、現実の世界で、

手前の天使とマリアはいるのは神の領域という感じに

なっているのでしょうか。

 

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レオナルド・ダ・ヴィンチの受胎告知です。1475年頃の作品。
またマリアが花園に戻ってきました。今回は小花よりも背景に描かれた
糸杉と松が非常に印象的です。糸杉は古代では「死の木」でしたが、
12世紀頃から聖母マリアの純潔受胎のシンボルになっていったようです。
そして松は「不死」と「永遠の生命」のシンボル。
自然に興味を寄せていたレオナルドは、何度も草花や木のスケッチを
していたので、それらを大集合させて描いたのでしょう。

レオナルドの受胎告知についても前にブログで少し触れましたので
リンクを貼っておきます。

 

egotisme.hatenablog.com

 


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